レイトショー。カップルやファミリーもいれば、中年の人がひとりで来ていたりもして昼間の映画館とは異なる雰囲気がある。全く人ごとではないが、どうしてこの人はこんな時間に映画を見に来ているんだろうかと考えてしまう。いろんな人たちが一つのものを観に来ている。少し不思議な雰囲気だ。そんなところも好きだ。魔法使いが登場するようなファンタジーなアニメ映画で非日常感を楽しむにはぴったりだ。
メアリと魔女の花という映画、米林監督のチャレンジを感じた。
個人的に前作の「思い出のマーニー」もかなり好きだった。自分の内向的な性格から心を閉ざしてしまうマーニーの思春期ならではの繊細な感情が描写されている。好き嫌いが分かれるものだったと思うが、おそらくあの映画がジブリ作品でなかったら、かなり印象が違ったのではないか。そのくらい「ジブリ」とはこういうものだというのが日本国民の頭の中に存在している。
スタジオポノックとして作られた今回の作品は、ジブリらしさも存在するが、今までのジブリ作品とは異なる点も多くあった。
まず一番に感じるのは、キャラクターの絵だ。かなり現代風になっている。特に猫や犬の表情や動きはリアルに表現されている。
次に主題歌だ。SEKAI NO OWARI を起用している。ジブリ作品であったらありえなかっただろう。
この映画は時代に合わせて変わっていこうとする気持ちを感じる。かなり挑戦的だ。もちろんジブリらしいところもある。それは自然と人間の関係性だ。自然に対して畏敬の念がある。そのような考え方はジブリそのもののように感じる。
登場人物であるメアリもピーターもどちらも前向きな性格である。今作の主人公たちはそれぞれ「なんでも自分でできるようになりたい」とか「大人になってしっかり働きたい」というような変身願望を持ち、自ら変わっていこうとしている。前作のマーニーとは対照的である。
この映画のラストはかなりあっさりしている。自分の行ったことに対して自慢するような気持ちがなく、ただピーターと無事に帰ってこれてよかったという子供の純粋な心がよく表れていると思う。
またこの映画は米林監督の現在の心境をメアリに投影しているように感じる。そのように感じる点を挙げると
- 冒頭でメアリは、転校する学校で行う自己紹介の練習をしている。
- メアリは自分を変えていきたいと思っている。
- 作中にはジブリ作品の中で見たことのあるようなキャラや道具が頻繁に出てくる。
- 中盤にはメアリは魔法が使えなくなってしまい、一瞬は立ちすくんでしまうがすぐに立ち上がり、ピーターを助けに向かう。
ジブリという魔法を持たず、スタジオポノックという新しい場所で新しい作品を作っている今の米林監督にそっくりだ。これから頑張っていきます、よろしくお願いしますと自己紹介をしているように感じた。
ちなみにスタジオポノックの「ポノック」は深夜0時を意味していて、新たな1日の始まりの意味が込められているそうだ。このあたりにも米林監督の決意がひしひしと伝わってくる。
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