新しい「好き」”が生まれる場所へ僕たちが舵を切った日々のこと。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

広島市の少し外れたところにLECTというショッピングモールがある。中国地方では有名なスーパーであるイズミとTSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が共同で作ったショッピングモールだ。

ショッピングモールといえば、イオンモールがあちこちに増えてきていて、今やそれほど珍しいものではなくなったが、このLECTは少し違う。


まず、広い。ショッピングモール内に、子供たちが遊べる広場があったり、買い物途中に休憩できるソファやリクライニングチェアがいたるところに置いてあったりと、買い物以外のスペースが多い。休憩場所も開放的な場所があったり、隠れ家的な場所があったりと、バラエティ豊富だ。子どものいる家族や買い物に付き合わされているお父さんにも優しい。


また、本屋がおしゃれだ。天井まである本棚にきれいに本が並べられていて、写真でしか見たことのないどこかの外国の図書館みたいで、かなりばえる。カフェの数が多く、本を読むために一人で来たお客さんも困らない。

毎週店内外で蚤の市やミニコンサートなど何かしらのイベントが行われていて、何度来ても新鮮味がある。私もコンスタントにいくが、LECTへ行く時は、何かを探しにいくというより、居心地の良さを感じるために行く感覚だ。人がごった返すショッピングモールでリラックスできるというのはあまりないのではないかと思う。

CCCの考え方がよくわかる本がある。梅谷知宏さんの“新しい「好き」”が生まれる場所へ僕たちが舵を切った日々のこと。という本だ。

この本は函館蔦屋書店の社長になった梅谷さんがオープンまでのストーリーを書いたものだ。CCCの社長へ社内での新規事業のプレゼンに来たつもりが、別会社の社長になることを言い渡されたというのが、面白い。

CCCのTSUTAYAといえば、商品として、本とCD、DVDを売っているが、真に売りたいものはそれらによって表現された“ライフスタイル”であるという信念があるそうだ。そしてその“ライフスタイル”を売っているお店は地域に根ざしたものでなければならない。

言葉で言うのは簡単だが、地域外の企業の人が実際にそれを行うのはかなりハードルが高い。場所、規模、出店店舗など、すべて企業が決めてしまうため、どうしても地域の声は反映されにくい。そのため、どのショッピングモールも画一的なものになってしまいがちだ。

しかし函館蔦屋書店では、お店のオープンまでの間に、地域のコミュニティーに入り込んで、“友達を100人作る”ことから始めた。そして、地域の人たちに集まってもらえる場となるための調査を行なった。実際にオープン後には月に100回ものイベントが地域の人が自主的に開催されるなど、地域の人々にとって欠かせないコミュニティーとなっている。

物を買うということは、ネットでも出来るし、利便性などを見るとネット販売の方がメリットが大きい。しかし、地域の人たちが集まって、その時間、空間などプロセスを楽しむというのは実際にお店に行かないとできないことだ。そして、そのプロセスを通して新しい“ライフスタイル”を生み出していくのかもしれない。

ちなみにこの本の中は、軽いノリの言葉で書かれていたり、(笑)といった言葉が出てくる。個人的には正直に言って軽い言葉が出てくる本はあまり好きではないが、この本はあまり不快にはならない。

それはおそらく、「この人はいつでもこんなひとなんだろうな」と感じるからだと思う。本の中であっても、そういった雰囲気を大切にしているのだと思う。

 

 

読み味スッキリ度★★★★☆

店舗について考えさせられる度★★★★★

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*