麦本三歩の好きなもの

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私のアパートの玄関の近くで1匹のカメムシが死んでいた。そいつは4月ころにアパートの玄関横の壁に現れた。

自分の部屋を出入りするためにはどうしてもそばを通る必要がある。最初はこちらに飛んでくる
のではないかと、ヒヤヒヤしながらそーっとそばを通っていた。

が、何度通っても動く気配がなかったので、いつのまにかは気にせず通るようになっていた。

それからそいつはずっと同じ壁の同じ場所にいた。なにをするでもなく1匹でじっとしている。私が見る限りでは全く動いたことがない。

ちゃんとご飯は食べているのか、ちゃんと仕事してるのかと、母親のような不安すら抱くようになった。

あまりに動かないので、「おいお前はそんな人生(カメムシ生?)でいいのか、それで楽しかったのか」と人生論を説いてやりたくもなったが、果たしてカメムシにとっての幸せとはどんな状態なのだろうとも思う。

人間にとっての幸せな状態とは何かと問われると、ぱっと思いつくのは仕事で大成功して、大金持ちになって、スーパーカーを乗り回し、年に数回ハワイの別荘で過ごして、、、みたいなビッグな夢だ。

日常のなかで探してみると、寒い日のお風呂とか、好きなアーティストの音楽がすごくよかったとか、友達とのくだらないやりとりが面白かったとかだろうか。

こうやってあげてみると、案外幸せは近くにたくさんあるものだ。もやもやとした悩みも、身近の小さくてしょうもないことに心救われることも多い。

幸せは夢に見るようなでっかいものではなくて、身近にある小さくて曖昧なものなのかもしれない。

この本に出会えたことも小さな幸せの一つだ。住野よるさんの「麦本三歩の好きなもの」だ。

これは図書館で働く主人公の麦本三歩の日常を描いたコミカルな小説だ。

住野よるさんといえば最近映画化された、「君の膵臓をたべたい」が有名だ。だから、この本は少し異質な感じがあった。

三歩は少し”抜けている”ところがあり、そのせいで周囲をトラブルに巻き込むことが多々ある。でも当の本人は真剣そのものだ。だからこそ周りから嫌われることがない。放っておくことができないタイプといったところだろうか。

この小説は三歩の日常を描いているだけなのに、多幸感にあふれている。

現実世界で劇的なことはそう起こらない。だから小説や、映画ではドラマチックなことを求めてしまうが、幸せは日常の中のちょっとした瞬間にある。

三歩のように日々自分らしく、自分なりに一生懸命にやることが幸せへの道なのだろう。

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