平成30年間の歴史を終え、令和となった。
ただ呼び方が変わっただけだが、新元号になるということはやはり特別な気持ちになるものだ。思い返せば、平成には日本とって数々の“試練”と思ってしまうような出来事が連発した。
平成の始まりはバブルの崩壊からだった。人々がみな浮かれ騒いでいたバブルがはじけた後の日本経済は一気に停滞し、”失われた20年”と言われ、今では失われた30年と言われるようになった。
また、自然災害も多かった。地震で言えば、阪神大震災、東日本大震災など、”100年、1000年に一度”といわれるような大地震が複数回起こり、多くの犠牲者が出た。
悪いことばかり思い出してしまうのは、不公平かもしれないが、個人的な感覚としては、次々とおそいかかる試練にじっと耐えるのがやっとだったような気がする。
そんな平成を越えて、新元号が「令和」と発表された。安倍総理は会見の中で、その選定理由ついて、このように説明している。
“人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つという意味が込められております。 (中略) 厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人一人の日本人が明日への希望と共に、それぞれの花を大きく開かせることができる、そうした日本でありたいとの願いをこめ、「令和」に決定いたしました。”
ある新聞の調査によると、約70%の国民の好感を得ているらしい。
これほどまでに好感を得ているのは、日本古来の豊かな自然に対する感覚に共感したことと、選定理由が現在の日本の状況にマッチしているからではないだろうか。
また、初めて日本の古典である万葉集から引用していることも、好感を得ているポイントだろう。日本の新しい文化を育てるにはもってこいだ。
現時点ではかなり良いスタートを切ったように感じるが、これから新しい時代”令和”が良い時代になる為にはどうしたらよいのだろうか。
デービットアトキンソンさんの「日本人の勝算」という本にその一つの答えがあるように感じた。
デービットアトキンソンさんはイギリス生まれで、日本在住30年。小西美術工藝社の社長であると同時に、日本の経済に精通しており、経済評論家としても活動している。
この本の中でも、たくさんのデータを通して日本人の強み、弱みを分析している。その中でも、最も強く主張しているのが日本人の人材評価高さとそれに比例しない生産性の低さだ。
World Economic Forrumという評価機関のランキングの中で、「人材の質」では全国4位と非常に高い評価を得ている。しかし、「生産性」に関しては、世界28位と先進国としてはかなり低い順位となっている。
一人一人の生産性が低いことは今後加速していく人口減少のなかで経済力の低下の大きなリスクをはらんでいる。認めたくはないが、今日本が世界において経済力を保持的でいるのは、人口の多さで生産性の低さをカバーできているからである。
日本が日本らしさを取り戻し、文化を築いていく為には、仕事のあり方を根こそぎ見直し、一人一人が生産的な働き方をしていくことが絶対条件である。