最近なにかと企業の経営不振や、不正のニュースをよく目にする。
20代の社会人は日頃から何か価値観が違うと「これだからゆとりは。」などと批判されることも多いが、こちらからも言わせていただくと、不正発覚のニュースや今までの景気の低迷で露わになっているように、現在の経営者世代の、経営者としての素質には甚だ疑問だ。
報道されている不正は、昔からの慣習として行われており、現在のトップの人世代の人たちも関わっていたり、黙認していた可能性もある。
また、昔は「がむしゃらに」働いていたらそれなりの成果が出ていた時代だったのではないかと思う。世の中を便利にするために、今ある製品の性能を高めれば商品が売れる時代だった。
製品間での性能では大きな差がなくなり、人々の価値観が多様化し、ただ高性能なものでなく、独自の機能や個性的なデザインが求められている現代の傾向に乗り遅れて日本企業の存在感が薄れて来てしまったように思う。
今回はそんな日本企業の2人の経営者の本を取り上げる。
大企業の経営危機から回復させた経営者と聞けば、カリスマ性を持った経営者を想像してしまうが、日立のさんは派手さのないリーダーだ。行なっていることは非常にシンプルで、一つの会社の経営理念を掲げ、その理念に従って、重視する分野に注力し、招待的に伸びそうにない分野を縮小させる。そして、決めた経営計画を着実にスピード感を持って実施する。
言葉で書くことは容易だが実際に実行して行くことは難しいことなのであろう。
河村さんは日航ハイジャック事件に遭遇しており、乗客全員の命を救うため、ハイジャック犯をひたすら説得し、自らなんとかしようとしたパイロットに感銘を受け、自らも沈む寸前の日立の会長となり、ラストマンとして、どんな結果になっても自ら決断し自ら責任を背負うことを心に決めたそうだ。
この本の中での言葉はシンプルで、非常にわかりやすい。社内の技術部門、経理部門、生産現場など全ての領域の社員に会社の方針と、そのための手段等を自ら実施してもらえるレベルまで理解してもらうためには、より簡潔に、伝える必要があるからだろう。
坂本さんはエルピーダメモリの社長であったが、不景気の波に飲まれエルピーダは2012年に会社更生法を申請し、最終的にはアメリカの会社に吸収された。エルピーダはPCやスマホのメモリを作る企業で、世界一の技術を持ちながらに倒産し、当時大きなニュースとなった。エルピーダは元々NECと日立が共同で設立した会社である。皮肉なことに、v字回復を遂げた日立と、遂げられなかったエルピーダという形になってしまった。
不景気に直面し、不運な部分もあるが、坂本さんの意見の中には、「〜が仕事をしない」とか、「〜がお金を貸してくれない」などと周りを批判したり、10年間社長を務めておきながら、「あと一年あれば…」などと言い、経営者としての選択ミスを「不本意な敗戦」だったと言ってしまうところには少し疑問が残る。
しかし、日立も倒産ぎりぎりのところまで追い詰められている。二人のラストマンの運命は真逆の方向となったが、どちらも紙一重の差であったようだ。