勝手に今年の夏の課題図書にしようと思っていた本がある。
今村夏子さんの「星の子」という本だ。
表紙の夜空がとても綺麗で、ずっと気になっていた。しかし、帯を見てみると、どうやら重々しい内容のようだった。
主人公の林ちひろは生まれた時から病弱で、どうにかして救おうと、両親は怪しげな宗教を信仰するようになり、家族のかたちを歪めていく。
重い。読みたいけど読みたくない。そんな気持ちだった。
子供の頃、私は夏休みの宿題として出される読書感想文を書くのが嫌いだった。そもそも本をほとんど読んでいなかったため、読書が苦手だった。日頃から読んでいないのだから、読みたいものもあるはずもなく、読書感想文は課題図書の中から選んでいた。
読みたいと思って選んでいないので、気が進まず、夏休みの最後に急いで読んで、どうやったら字数が多くなるかだけを考えて読書感想文を完成させていた。
学生時代にあった宿題も、社会人になると全くなくなる。誰からも勉強をしろと言われなくなり、常に自主学習だ。なんでも勉強していいという楽しさもあるが、あれほど嫌だった宿題も少し恋しくなる。少しくらい強制感がないと、延々と先伸ばしてしまうのだ。
だからこの本を今年の夏の課題図書と決めた。
あらすじだけを読むと、重々しい雰囲気になってしまいそうだが、読み進んでみると、それほど重苦しくなく、むしろあたたかい雰囲気で進んでいく。それはおそらく純粋な少女の視点から描かれているためだろう。
両親が周りから見ると「怪しげな宗教」を信仰していて、周囲の人たちから冷たい目で見られてしまう。生活のふとした瞬間に軽蔑の言葉を浴びせられる。
でもそれは物心がついた時からそうであった主人公にとっては当たり前ことで、大切な両親だ。
しかし、中学生になると次第に気づきはじめる。自分の家族が他の人からみて「変な人」であるということを。そして、自分もまた「変な人」なのだろうかと考えてしまう。
友達や家族と自分との違い、そして過去の自分との違いが見えてきてしまう。静かにゆっくりと、でも確実に変化していく。
自分が変わっていくことは、少しさみしい。
思春期特有の繊細で不安定な部分や、自分と周りの同級生たちの成長とそれに伴うそれぞれの心の変化、心の葛藤が細かく表現されている。
強烈なインパクトはないけれど、心に長くじんわりと残る。
無数の星が輝く中での一瞬で消えてしまう流れ星を見つけた時の、綺麗だけれど、消えた後の寂しさが残るようなそんな作品だった。
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