アイネクライネナハトムジーク

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ここにヒーローはいない。さあ、君の出番だ。

明日が待ち遠しくなること間違いなし!

ごく普通の人たちが起こす、小さな奇跡の物語。

 

この本の帯に書いてある文章だ。この本を読んだ後、確かにそうだと思った。

 

 

この本のあとがきにも書いてあるが、伊坂幸太郎さんの作品の中では珍しく、殺し屋であったり、超能力者といった人物や、地球に隕石が衝突するといった特別な設定がなく、「ごく普通の人たち」の話である。

その「ごく普通の人たち」が、日常のなかで起こったトラブルとそれに関わる人たちとの小さな出会いの話だ。この本のスケールはかなり小さい。登場人物数人の中の人間関係が影響しあって、日常が流れて行く。

派手さはないが、たしかに存在するその小さな幸福感がとても心地いい。

 

この本の中に次のような文章がある。

「その時は何んだか分からなくて、ただの風かなあ、と思ってたんだけど、後になって、分かるもの。ああ、思えば、あれがそもそもの出会いだったんだなあ、って。これが出会いだ、ってその瞬間に感じるんじゃなくて、後でね、思い返して、分かるもの」

 

この本のキーとなるものだ。5つの話の全てで形は様々だが、「出会い」をテーマとしている。そして、その出会いたちが最後に繋がってくる。それは「これは運命だ」という電気が走るような出会いではなく、繋がりは弱いけれど、確かにお互いに影響を与えるような出会いであり、10年、20年経った後に「あれが出会いだったんだ」とわかるような出会いだ。

日常の何気ない出来事にそれに関わる人々との出会いがあり、その出会いが自分や、その人の何かに影響を与えている。

 

バタフライ効果という言葉を思い出した。

バタフライ効果とは気象学での言葉であり、長期的な気象予報の際に遠くの場所で蝶が羽ばたく程度のごく微小な空気の動きを考慮するかどうかで結果が変わるという、予測の難しさを表した例えのようなものだ。(私はそう理解している)

蝶側としても、ただ生きるために飛び回っているだけであるし、まさか自分が遠くの場所の天気予報を狂わせているという自覚はないだろう。しかし、蝶のはばたきが気象予想を狂わすには十分な影響力を持っている。

自分たちの行動の1つ1つも自分の知らないところで誰かに影響を与えているのかもしれない。

会社からの帰り道、天気予報を狂わせるために手で蝶の動きを真似てみる。我に返って、恥ずかしくなって、周囲を確認する。そして、足早に家に帰るのであった。

 

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