私は本屋に行くのが好きだ。
働きだしてからは仕事での時間的拘束や、近くに本屋がないこともあって大学のころよりは減ってしまったが、それでも週1回は行く。しかし、毎回本 を買うわけではない。読みたいと思ったものがあればお金の許す限りは買うようにはしているが、本屋に行く理由は散歩に行くといった意味合いに近い。
以前会社の同じ職場の先輩に商品のラインナップなんてそんなに変わらないのに、なんでそんなに本屋に行くのかと聞かれたことがある。
そのときには「本屋好きなんですよねー」くらいの回答しかできず、しっかりと答えることができなかったが、最近いい例えを思いついた。
図書館は水族館に行くような気持ちで行っている。
無数の魚がそこらじゅうを泳いでいて、時々「こんな魚がいるのか」と足を止めてじっと見る。
私のような魚に対してほとんど知識のない人間にとって、どこの水族館でも水槽の中にいる魚は劇的な違いはない。ちょっと変わった魚がいるという認識くらいしかない。
そもそも、どんな魚がいるかなんて二の次で、その雰囲気を楽しむことがメインだと思っている。
「深海魚コーナー」のようなテーマに分けていたり、大きな魚と小さな魚の群れが同じ水槽の中で泳いでいたりと見せ方が工夫されており水族館ごとの特徴がある。
本屋でも同じだ。置いてあるものは大体同じだが、本屋によって陳列の方法や、プッシュするものは各々違う。店員さんのおすすめやポップなども楽しみの一つだ。
また、先週は端っこの方にあったのに、今週はより目立つところに置いてあったりする。売り上げが思ったより伸びて、格上げとなったのだろう。まるで、水族館の魚の成長を自分だけが観察しているようだ。
せきしろさんの「たとえる技術」という本を読んだ。ものの例え方をこれほど真面目に、おもしろく説明している本はこの本以外ないだろう。
例えば、「狭い」という言葉でも、
「対向車が来ませんようにと願う道のように狭い」
とすることで、どの程度の狭さなのかが鮮明にイメージすることができる。またそれだけでなく、「狭い」ことに対する不安な感情も表現することができる。
適切な例えを用いることでその単語の大小だけでなく、楽しさやもの寂しさ、懐かしさなどの感情を表現することができる。
それにしても、この本の中に書かれている例えの例(かなりややこしい言葉だが)はどれも素朴で日常に寄り添った、自分たちのすぐ近くにあるような例えで、その距離感が絶妙だ。
その例えの1つ1つにせきしろさんの世界観が溢れている。的確で遊び心があって、若干ひねくれている。いや、結構ひねくれている。
そのひねくれ加減はまるで、外国で日本人とばったり出会った時のような安心感を与えてくれる本だった。
にほんブログ村 |
人気ブログランキング |