書き出し小説

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「春が2階から落ちて来た」

伊坂幸太郎の「重力ピエロ」の書き出しだ。めちゃくちゃおしゃれだ。実際には春というのが主人公の弟の名前であり、弟が落ちて来ただけ(だけというのも少しおかしいが)なのだが、言葉のインパクトが大きい。

伊坂幸太郎の書き出しは毎回すこしだけ変わっている。始まりの一文から面白い。伊坂幸太郎の魅了の一つだ。

小説の書き出しは始まるわくわくが詰まっているし、その人の作風や、性格がよく現れている。また、書店で手にとって少し読んでみて買うかどうか決める人もいるだろうから、買って読んでもらうためにも重要だ。それは合コンや街コンで、無数のライバルとひしめき合う中で、自分を選んでもらいための自己紹介のようなものだ。面白い人だと思われるために少しふざけるか、インテリ系アピールのために落ち着いた感じで行くか。。。うーん、悩ましい。

 

書き出しだけが書いてある本がある。天久聖一の「書き出し小説という本だ。

 

実際には書き出しではなく、書き出しのような文章の大喜利を集めたのような内容だが、面白い。内容も面白いものや、ミステリー系、なかには理解できないものもある。時々おおっ!と思うものがある。頭の中に一瞬でイメージが湧き、笑える。その書き出しの先を想像してしまうが、大体はしょうもない。ここでいうしょうもないは褒め言葉だ。

一つだけ私のお気に入りを紹介したい。

 

むせかえった父は大量に舞い上げた粉薬を残し、忽然と消えた。

 

何の変哲も無い平和な日常の中で起こった、突然の出来事。家族は全員(私の想像の中では核家族で、夫婦と娘の三人暮らし。みんなで朝食を食べている最中だ。)唖然としていて、動けないままだ。その空間の中で動いているものは舞い上がった粉薬だけ。勝手な想像だが、一文だけでそのような状況が頭に浮かんでくる。

ちなみに私がブログを書くとき、書き出しはとてもワクワクしている。しかし、締めくくりはかなり苦しい。締めくくり方に毎回困ってしまう。誰かにとって、何か役に立つことを書きたいが、もともとそんなつもりで書いていないので、思いつくわけも無い。今の私に必要なのは締めくくりだけを集めたものかもしれない。

 

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